薬剤師の年収が低すぎると感じる理由|都道府県で244万円差

「薬剤師の年収は低すぎる」と感じる原因を、厚生労働省の賃金構造基本統計調査を都道府県別に集計して検証しました。1位の広島県675.6万円と47位の徳島県430.7万円では244.9万円の差があります。

最終更新 2026年7月27日 公開 2026年7月27日 執筆 編集部

この記事でわかること

  • 全国平均は543.3万円だが、都道府県別では広島県675.6万円から徳島県430.7万円まで244.9万円の幅がある
  • 東京都は23位(548.5万円)、埼玉県42位、京都府46位。都市部が高いとは限らない
  • 全国平均を上回るのは47都道府県のうち25。半数近くの地域では平均より低くなる

「薬剤師の年収は低すぎる」という検索が一定数あります。公表される平均年収は543.3万円で、給与所得者全体と比べれば低い水準ではありません。それでも実感と合わないのは、平均値がどの地域の水準を指しているのかが示されないまま使われているためです。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から薬剤師(職種小分類コード1124)のデータを47都道府県すべてについて抽出し、年収に換算し直しました。自分の勤務地の水準と照らし合わせれば、感じているズレの大きさを数字で確認できます。

本記事の調査・評価基準

調査対象
薬剤師(職種小分類コード1124)の一般労働者、男女計、企業規模10人以上、47都道府県
数値の確認日
令和5年(2023年)調査
評価項目
所定内給与額、年間賞与その他特別給与額、労働者数
順位の決め方
年収は「所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出。所定内給与額には残業代が含まれないため、実際の支給総額はこれより高くなる。都道府県別は対象人数が少ない地域があり、賞与の年変動を受けやすい点に注意
編集方針
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1位広島県675.6万円、47位徳島県430.7万円

まず幅の大きさです。

広島(1位) 広島(1位):675.6万円 675.6 万円 愛知(8位) 愛知(8位):583.9万円 583.9 万円 全国平均 全国平均:543.3万円 543.3 万円 東京(23位) 東京(23位):548.5万円 548.5 万円 徳島(47位) 徳島(47位):430.7万円 430.7 万円
都道府県別の薬剤師の推定年収。上位と下位では244.9万円の差がある。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が算出

1位の広島県は675.6万円、47位の徳島県は430.7万円。その差は244.9万円です。全国平均543.3万円という1つの数字だけを見ていると、この幅は見えません。

平均を上回るのは47都道府県のうち25です。裏を返せば22の地域では平均を下回ります。「平均より低い」と感じている人のほうが少数派ではない、ということになります。

都市部が高いわけではない

もうひとつ、実感とのズレを生んでいるのが地域の思い込みです。

地域順位推定年収全国平均との差
愛知県8位583.9万円+40.6万円
大阪府14位566.2万円+22.9万円
兵庫県16位558.6万円+15.3万円
千葉県21位553.3万円+10.0万円
東京都23位548.5万円+5.2万円
神奈川県26位543.0万円−0.3万円
埼玉県42位486.7万円−56.6万円
京都府46位449.0万円−94.3万円

東京都は23位で548.5万円。全国平均をわずか5.2万円上回るだけです。神奈川県は26位で全国平均をわずかに下回り、埼玉県は42位、京都府は46位という結果になっています。

一方で上位には広島県・秋田県・宮城県・鹿児島県・鳥取県が並びます。薬剤師が不足している地域ほど給与を引き上げなければ採用できないため、人口が少ない地域のほうが高くなるという構造がここに現れています。

東京や大阪の勤務者が「思ったより低い」と感じるのは、生活費が高いにもかかわらず年収が全国平均並みだからです。感覚のほうが正確で、統計と矛盾していません。

47都道府県の一覧

自分の勤務地を確認してください。

順位都道府県推定年収月額(所定内給与)年間賞与労働者数
1広島県675.6万円43.9万円148.9万円約1,430人
2秋田県667.0万円46.7万円106.5万円約1,110人
3宮城県638.9万円43.3万円119.4万円約1,280人
4鹿児島県625.2万円42.6万円114.0万円約600人
5鳥取県601.8万円38.7万円136.9万円約390人
6香川県590.9万円40.2万円109.0万円約250人
7三重県588.7万円43.0万円72.8万円約1,600人
8愛知県583.9万円43.8万円58.6万円約7,540人
9長崎県576.5万円39.1万円107.1万円約2,430人
10島根県575.2万円40.3万円92.2万円約240人
11佐賀県573.0万円41.0万円80.7万円約1,090人
12宮崎県568.4万円43.8万円43.1万円約900人
13群馬県566.5万円40.5万円80.9万円約1,160人
14大阪府566.2万円39.3万円94.4万円約10,340人
15福岡県566.0万円42.3万円58.8万円約3,570人
16兵庫県558.6万円40.7万円70.2万円約10,300人
17山口県557.7万円38.0万円101.8万円約1,210人
18愛媛県556.4万円40.1万円75.3万円約1,110人
19栃木県554.8万円37.8万円101.3万円約2,250人
20岡山県554.3万円43.8万円28.4万円約2,440人
21千葉県553.3万円38.5万円90.9万円約3,510人
22山形県550.2万円36.6万円111.4万円約660人
23東京都548.5万円39.0万円80.9万円約7,800人
24石川県547.8万円41.6万円48.7万円約1,180人
25大分県546.6万円36.0万円114.5万円約1,100人
全国543.3万円38.9万円76.9万円約107,830人
26神奈川県543.0万円39.0万円75.3万円約5,590人
27富山県542.5万円39.8万円65.5万円約1,240人
28福井県541.6万円36.5万円104.2万円約240人
29和歌山県537.1万円34.2万円126.3万円約300人
30山梨県536.4万円36.3万円101.2万円約430人
31岐阜県533.6万円36.6万円94.8万円約1,070人
32静岡県530.9万円38.7万円66.5万円約2,780人
33福島県526.6万円35.7万円98.1万円約1,490人
34沖縄県524.8万円37.6万円74.0万円約1,260人
35滋賀県518.7万円36.9万円76.3万円約810人
36長野県507.7万円35.8万円77.8万円約2,160人
37岩手県499.7万円34.9万円81.5万円約700人
38茨城県496.3万円36.3万円61.0万円約3,060人
39奈良県495.1万円33.8万円90.1万円約1,220人
40熊本県489.6万円36.7万円49.4万円約1,420人
41北海道487.8万円35.4万円63.3万円約3,090人
42埼玉県486.7万円35.7万円58.8万円約8,730人
43新潟県486.0万円33.0万円90.2万円約2,290人
44青森県484.2万円36.0万円52.1万円約670人
45高知県459.5万円29.3万円108.2万円約260人
46京都府449.0万円32.3万円61.1万円約1,940人
47徳島県430.7万円31.2万円56.3万円約1,600人

対象人数が少ない県(鳥取・香川・島根・福井・高知など)は、少数の勤務先の条件が平均に強く反映されます。順位そのものより、自分の県が全国平均のどちら側にあるかを見るほうが実態に近い読み方です。

「低すぎる」と感じる3つの原因

ここまでのデータと、当研究所が同じ調査から集計した年代別・企業規模別の結果を合わせると、実感とのズレは次の3点に整理できます。

1. 平均値が自分の地域を指していない

全国平均543.3万円は47都道府県を合算した数字です。埼玉県なら486.7万円、京都府なら449.0万円が地域の水準であり、全国平均と比べれば低くて当然です。

2. 30代後半で伸びが止まる

年代別に見ると35〜39歳の604.6万円をピークに、40代前半590.5万円、40代後半584.6万円と2階級続けて下がります。給与カーブが右肩上がりではなくN字に近い形をしているため、30代後半以降に「上がらなくなった」と感じます。

3. 大手ほど年収が低い

企業規模別では10〜99人が617.6万円で最も高く、1,000人以上は517.9万円です。知名度のある大手チェーンに勤めているほど、年収では不利になりやすいという逆転が起きています。

あわせて読みたい薬剤師の年収は543万円|40代で下がる理由をデータで検証薬剤師の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から独自に集計しました。年代別に見ると35〜39歳でピークを迎えたあと40代で下がること、企業規模が小さいほど年収が高いことがわかります。

年代別・企業規模別・経験年数別の詳しい数字は上の記事にまとめています。

実感とのズレを埋めるためにできること

判断材料として、次の順で確認するのが現実的です。

  1. 自分の都道府県の水準と比べる — 全国平均ではなく、上の一覧の該当行が比較対象
  2. 企業規模を確認する — 1,000人以上に勤めているなら、規模の小さい薬局のほうが年収では上になりうる
  3. 年代別のカーブ上でどこにいるか把握する — 40代の停滞は個人の評価ではなく職種全体の傾向
  4. 働く時間あたりの単価で考える — 短時間勤務の時給は平均2,845円で、常勤の賞与込み時間単価2,744円を上回っている

「低すぎる」という感覚は、多くの場合、比較対象が全国平均になっていることから生じています。比較する相手を自分の地域・規模・年代に合わせると、上げ幅の余地がどこにあるのかが見えるようになります。

まとめ

  • 都道府県別では広島県675.6万円から徳島県430.7万円まで244.9万円の幅がある
  • 東京都は23位(548.5万円)、埼玉県42位、京都府46位。都市部が高いとは限らない
  • 全国平均を上回るのは47都道府県のうち25。下回る地域のほうが少数派ではない
  • 実感とのズレは「地域」「30代後半以降の停滞」「大手ほど低い」の3点から生じている

比較対象を全国平均から自分の地域に置き換えることが、実感と数字を合わせる最初の一歩です。

出典

  1. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_都道府県別_職種(特掲)DB(e-Stat statsDataId 0003445758)
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)DB(e-Stat statsDataId 0003426315)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」