薬剤師の年収は543万円|40代で下がる理由をデータで検証

薬剤師の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から独自に集計しました。年代別に見ると35〜39歳でピークを迎えたあと40代で下がること、企業規模が小さいほど年収が高いことがわかります。

最終更新 2026年7月27日 公開 2026年7月27日 執筆 編集部

この記事でわかること

  • 薬剤師の平均年収は543.3万円(所定内給与×12+年間賞与で算出)
  • 35〜39歳の604.6万円をピークに、40代前半で590.5万円、40代後半で584.6万円と下がる
  • 企業規模10〜99人が617.6万円で最も高く、1,000人以上の517.9万円を約100万円上回る

「薬剤師の年収は高い」と言われる一方で、実際に働いていると「思ったより上がらない」と感じる人は少なくありません。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から薬剤師(職種小分類コード1124)のデータだけを抽出し、年代別・企業規模別・経験年数別に集計し直しました。平均値をひとつ示すだけでは見えない、給与カーブの形を確認していきます。

本記事の調査・評価基準

調査対象
薬剤師(職種小分類コード1124)、男女計、企業規模10人以上
数値の確認日
令和5年(2023年)調査
評価項目
所定内給与額、年間賞与その他特別給与額、労働者数
順位の決め方
年収は「所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出。所定内給与額には残業代が含まれないため、実際の支給総額はこれより高くなります
編集方針
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薬剤師の平均年収は543.3万円

まず全体の数字です。

項目金額
所定内給与額(月額)38.87万円
年間賞与その他特別給与額76.87万円
推定年収543.3万円

集計対象となった薬剤師は約10万7,800人です。

ここで注意したいのは、所定内給与額に残業代が含まれていない点です。調剤薬局や病院では時間外業務が発生するため、実際の手取り総額はこの金額より高くなります。逆に言えば、543.3万円は「残業なしで働いた場合の水準」に近い数字です。

35〜39歳をピークに、40代で年収が下がる

年代別に並べ直すと、平均値では見えない形が現れます。

300 433 567 700 20代前半:334.2万円 20代前半 20代後半:438.7万円 30代前半:512.1万円 30代前半 30代後半:604.6万円 604.6 40代前半:590.5万円 40代前半 40代後半:584.6万円 50代前半:656.6万円 656.6 50代前半 50代後半:675.3万円 60代前半:546.7万円 546.7 60代前半 万円
薬剤師の年齢階級別の推定年収。35〜39歳でいったんピークに達したあと、40代前半・後半と2階級続けて下がり、50代で再び上昇する。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が算出
年齢階級推定年収前の階級との差
20〜24歳334.2万円
25〜29歳438.7万円+104.5万円
30〜34歳512.1万円+73.4万円
35〜39歳604.6万円+92.5万円
40〜44歳590.5万円−14.1万円
45〜49歳584.6万円−5.9万円
50〜54歳656.6万円+72.0万円
55〜59歳675.3万円+18.7万円
60〜64歳546.7万円−128.6万円

20代から30代後半にかけては、5年ごとに70〜100万円ずつ順調に伸びています。ところが35〜39歳で604.6万円に達したあと、40代前半で590.5万円、40代後半で584.6万円と2階級続けて下がります。

そして50代に入ると再び上昇し、55〜59歳の675.3万円が最も高くなります。

つまり薬剤師の給与カーブは右肩上がりの直線ではなく、40代に停滞期がある「N字」に近い形をしています。30代後半で伸びが止まったように感じるのは、気のせいではありません。

この数字の読み方に注意

ひとつ補足が必要です。これは同じ人を追跡した数字ではなく、調査時点で各年齢階級にいた人を横断的に集計したものです。40代の年収が下がって見える背景には、次のような構造が考えられます。

  • 40代は出産・育児を経てパートや時短勤務から常勤に戻った層が含まれる
  • 管理職に就いた層と現場に残った層で差が開き、平均が押し下げられる
  • 50代の高い数字は、管理薬剤師やエリアマネージャーに昇進した層が牽引している

したがって「40代になれば年収が下がる」と決まっているわけではありません。ただし30代後半から40代にかけて、昇進の有無で差がつき始めるという傾向は、このデータから読み取れます。

企業規模が小さいほど年収が高い

一般的には企業規模が大きいほど給与が高くなりますが、薬剤師では逆転しています。

10〜99人 10〜99人:617.6万円 617.6 万円 100〜999人 100〜999人:526.8万円 526.8 万円 1,000人以上 1,000人以上:517.9万円 517.9 万円
企業規模別の推定年収。最も小規模な10〜99人が最も高く、1,000人以上を約100万円上回る。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が算出
企業規模推定年収労働者数
10〜99人617.6万円約2万3,800人
100〜999人526.8万円約4万2,100人
1,000人以上517.9万円約4万2,000人

最も小規模な10〜99人の企業が617.6万円で最も高く、1,000人以上の517.9万円を約100万円上回っています。

背景にあるのは薬剤師の人材不足です。ブランド力や福利厚生で見劣りする中小の調剤薬局は、給与水準を上げなければ人を採用できません。逆に大手チェーンやドラッグストアは、知名度・研修制度・キャリアパスといった給与以外の条件で採用できるため、初任給以降の伸びを抑えられます。

年収だけを基準にするなら、大手より地域の中小薬局を検討したほうが上がる可能性があります。ただし小規模な職場は、産休・育休の取得実績や店舗異動の柔軟性で不利になることがあるため、金額だけで判断するのは危険です。

経験年数15年以上で621万円

経験年数で見ると、伸び方はより素直です。

経験年数推定年収
0年373.7万円
1〜4年490.5万円
5〜9年512.5万円
10〜14年588.3万円
15年以上621.0万円

未経験の373.7万円から15年以上の621.0万円まで、約247万円の幅があります。

ただし伸び幅を細かく見ると、0年から1〜4年で116.8万円上がったあと、1〜4年から5〜9年では22.0万円しか上がっていません。入職から数年で一度伸びが鈍り、10年を超えたあたりで再び上がるという構造です。5年目前後で「頭打ち感」を覚えるのは、この段階に対応しています。

年収を上げる選択肢は3つ

ここまでのデータから、年収を上げる方向性は次の3つに整理できます。

  1. 業態や企業規模を変える — 企業規模10〜99人の水準は1,000人以上より約100万円高い。大手から地域の薬局への移動は、年収面では選択肢になりうる
  2. 管理薬剤師などの役職に就く — 50代の年収が回復する背景には昇進層の存在がある。40代の停滞を抜けるかどうかは役職の有無で分かれる
  3. 働き方そのものを変える — 短時間勤務の時給は2,845円で、正社員の時給換算2,356円を21%上回る。勤務日数を自分で調整しながら、時間あたりの単価を上げる方法もある

いずれも「今の職場で頑張る」だけでは動かない要素です。

3つ目については、時給の逆転がなぜ起きているのかを含めて別記事で検証しました。

時間あたりの単価で考えるなら薬剤師の派遣・パートは時給2,845円|正社員より21%高い理由薬剤師の短時間勤務の時給を厚生労働省の統計から集計すると2,845円で、正社員の時給換算2,356円を21%上回ります。賞与を含めて計算し直しても逆転は残ります。数字とトレードオフを検証しました。

まとめ

薬剤師の平均年収は543.3万円ですが、この数字だけを見ても実感とは合いません。データを分解すると次のことがわかります。

  • 20代から30代後半までは順調に伸び、35〜39歳で604.6万円に達する
  • 40代前半・後半は2階級続けて下がり、停滞期がある
  • 50代で再び上昇し、55〜59歳の675.3万円が最高
  • 企業規模は小さいほど高く、10〜99人で617.6万円
  • 経験年数では0年373.7万円から15年以上621.0万円まで約247万円の幅

「思ったより上がらない」という感覚は、30代後半以降の給与カーブの形からくるものです。平均値との比較ではなく、自分の年齢階級・企業規模・経験年数の水準と照らし合わせて判断してください。

出典

  1. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)_年齢階級、経験年数階級別(e-Stat)
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」