薬剤師の副業が成立する条件|145職種中12職種だけが満たす

本業の残業が少なく、かつ時間単位で高く売れる職種は145職種のうち12職種でした。賃金構造基本統計調査の一般労働者と短時間労働者を編集部が突き合わせた結果と、年12日で確定申告ラインに届く計算根拠を示します。

最終更新 2026年8月4日 公開 2026年8月4日 執筆 編集部

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この記事でわかること

  • 副業が成立するには「本業の残業が少ない」と「時間単位で高く売れる」の両方が要る。145職種のうち両方を満たすのは12職種
  • 薬剤師は残業が月10.0時間、短時間勤務の時給が2,845円で、この12職種に入る数少ない実務資格職
  • 時給2,845円・1日6.0時間なら、年12日で確定申告の目安である副収入20万円に届く

「薬剤師は副業しやすい」とよく言われますが、その根拠が示されることはあまりありません。そこで、副業が成立する条件を2つに分解して、公的統計で確かめました。

条件は単純です。本業の残業が少なくて時間が空くこと、そして空いた時間が高く売れること。どちらか一方だけでは副業は割に合いません。残業が月35時間ある職種に空き時間はありませんし、空き時間があっても時給1,200円なら移動時間を含めた拘束に見合いません。

本記事の調査・評価基準

調査対象
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年に収録された職種小分類145種すべて
数値の確認日
令和5年(2023年)調査。企業規模計(10人以上)・男女計
評価項目
一般労働者の超過実労働時間数(本業の残業時間)が月10時間以下、短時間労働者の1時間当たり所定内給与額(時間単位で売ったときの単価)が2,500円以上
順位の決め方
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145職種を2つの条件で絞ると12職種が残る

一般労働者の表(残業時間)と短時間労働者の表(時給)は、同じ調査の別々の集計です。この2つを職種コードで突き合わせ、両方に数値がある145職種を対象にしました。

  • 残業が月10時間以下の職種:63職種
  • 短時間勤務の時給が2,500円以上の職種:19職種
  • 両方を満たす職種:12職種

残った12職種は次のとおりです。

職種本業の残業(月)短時間勤務の時給短時間労働者数
歯科医師3時間8,133円2,002人
航空機操縦士3時間8,048円24人
大学教授(高専含む)0時間7,822円508人
大学准教授(高専含む)1時間7,198円209人
大学講師・助教(高専含む)3時間5,829円8,636人
音楽家,舞台芸術家6時間5,218円415人
法務従事者1時間4,317円32人
高等学校教員2時間3,406円3,208人
小・中学校教員3時間3,335円1,036人
管理的職業従事者3時間3,293円1,354人
薬剤師10時間2,845円4,454人
航空機客室乗務員2時間2,527円29人
歯科医師 歯科医師:8133円 8133 大学講師・助教 大学講師・助教:5829円 5829 高等学校教員 高等学校教員:3406円 3406 小・中学校教員 小・中学校教員:3335円 3335 管理的職業 管理的職業:3293円 3293 薬剤師 薬剤師:2845円 2845
条件を満たした12職種のうち、短時間労働者が1,000人を超える職種の時給。母数が小さい職種は統計上のばらつきが大きいため除いた。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が集計

この一覧を見ると、薬剤師の位置づけがはっきりします。12職種のうち大半は、大学の教員職・医師系・操縦士・法務職です。いずれも副業として時間を売る前に、教授職や有資格の専門職まで到達している必要があります。

薬剤師は違います。免許を取った時点で、短時間勤務の受け入れ先が全国にあり、短時間労働者だけで4,454人が集計対象になっています。12職種の中で、入り口が資格1つで済み、かつ受け入れ先の母数が大きい職種は薬剤師と大学講師・助教くらいです。

薬剤師の残業は月10.0時間で、中央値より2時間少ない

薬剤師の本業側の数字を確認します。

区分薬剤師145職種の中央値
所定内実労働時間数165時間/月
超過実労働時間数(残業)10.0時間/月12時間/月
残業の少なさ順位56〜63位(同数の職種が複数)

月10.0時間は、飛び抜けて少ないわけではありません。残業ゼロの大学教授や月2時間の高等学校教員と比べれば多いほうです。ただし145職種の中央値12時間は下回っており、月35時間の営業用大型貨物自動車運転者や月20時間の医師と比べれば、時間を作る余地は明確にあります

所定内165時間+残業10時間で月175時間。週に換算すると約40.4時間です。ここに休日を1〜2日充てられるかどうかが、副業が成立するかどうかの分岐点になります。

あわせて読みたい薬剤師の単発バイトは月4日で年106万円に届く単発・スポット勤務の薬剤師が月に何日入るといくらになるかを、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の時給から試算しました。時給2,845円・1日8時間なら、年間47日で106万円、57日で130万円に到達します。

年12日で確定申告の目安に届く

短時間勤務の薬剤師の実績値は、時給2,845円・1日当たり所定内実労働時間6.0時間です。この2つから、副収入がいくらになるかを計算します。

稼働副収入
1日(6.0時間)17,070円
月2日ペース(年24日)年40万9,680円
月4日ペース(年48日)年81万9,360円

給与所得者が確定申告を要するかどうかの目安は、給与以外の所得や副業の所得が年20万円を超えるかです(国税庁)。時給2,845円・1日6.0時間なら、年11.7日=実質12日で20万円に達します。時間で言えば70.3時間、月あたり6時間弱です。

つまり薬剤師の副業は、「月に半日だけ」といった軽い関わり方でも申告対象になる水準に届きます。始めるかどうかより先に、申告の準備を前提に置いておくほうが現実的です。

なお、副業の所得が20万円以下でも住民税の申告は別途必要になる場合があります。給与として受け取るか業務委託として受け取るかでも扱いが変わるため、金額が読めた段階で居住地の自治体と勤務先の就業規則を確認してください。

あわせて読みたい薬剤師パートの時給は勤務先の規模で1,490円違う薬剤師のパート時給を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から企業規模別に集計しました。1,000人以上は3,687円、10〜99人は2,197円で1,490円の差。正社員の年収とは逆に、大手のほうが高くなっています。

追加で売る時間の単価が下がらない

多くの職種では、短時間勤務の時給は正規雇用の時間単価を下回ります。薬剤師ではそれが起きていません。本業の時間単価2,356円に対し、短時間勤務の時給は2,845円です。

副業を検討する意味はここにあります。時間を追加で売っても単価が目減りしないため、月1〜2日という小さな稼働でも収入として意味を持ちます。

この逆転がなぜ起きるのか(賞与・社会保険・雇用の安定とのトレードオフを含む)は、派遣の記事で詳しく扱っています。

あわせて読みたい薬剤師の派遣・パートは時給2,845円|正社員より21%高い理由薬剤師の短時間勤務の時給を厚生労働省の統計から集計すると2,845円で、正社員の時給換算2,356円を21%上回ります。賞与を含めて計算し直しても逆転は残ります。数字とトレードオフを検証しました。

薬剤師の副業が向いている人

  • 本業の残業が月10時間前後に収まっていて、休日を月1〜2日空けられる人
  • 年20万円を超えた場合の確定申告を、手間として受け入れられる人
  • 勤務先の就業規則で副業・兼業が禁止されていないことを確認できる人

向いていない人

  • 公務員として勤務している人(国家公務員法・地方公務員法により営利企業への従事が制限される)
  • 本業の残業が月20時間を超えていて、休日が回復に必要な人
  • 短期間でまとまった額を狙いたい人(月2日ペースでは年40万円台にとどまる)

まとめ

  • 副業が成立する2条件(残業が月10時間以下・短時間勤務の時給2,500円以上)を満たすのは、145職種中12職種
  • 薬剤師はその1つ。残業月10.0時間(中央値12時間)、短時間勤務の時給2,845円
  • 12職種の多くは大学教員職や医師系で、免許1つで入り口に立てて受け入れ先の母数も大きいのは薬剤師と大学講師・助教
  • 時給2,845円・1日6.0時間なら、年12日(70.3時間)で副収入20万円。確定申告の目安に早く届く
  • 本業の時間単価2,356円に対し副業は2,845円。時間を追加で売っても単価が下がらない

副業を始めるかどうかは、稼げる額よりも「月1〜2日を安定して空けられるか」で決まります。数字の側はすでに条件を満たしています。

数値はいずれも令和5年(2023年)調査の全国平均です。勤務先の規模や地域によって実際の条件は変わるため、提示された時給がこの水準とどれだけ離れているかを基準に判断してください。

出典

  1. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)DB(e-Stat statsDataId 0003426315)
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 短時間労働者_職種_DB1(e-Stat statsDataId 0004008680)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
  4. 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」