薬剤師の派遣・パートは時給2,845円|正社員より21%高い理由

薬剤師の短時間勤務の時給を厚生労働省の統計から集計すると2,845円で、正社員の時給換算2,356円を21%上回ります。賞与を含めて計算し直しても逆転は残ります。数字とトレードオフを検証しました。

最終更新 2026年7月27日 公開 2026年7月27日 執筆 編集部

この記事でわかること

  • 薬剤師の短時間勤務の時給は2,845円で、正社員の時給換算2,356円を489円(21%)上回る
  • 賞与を含めて計算し直しても2,927円対2,744円で、逆転は残る
  • 短時間勤務の平均は月13.5日・1日6.0時間。正社員の月165時間に対して約半分

パートや派遣は正社員より時給が低い。多くの職種ではそのとおりですが、薬剤師では逆転しています。

この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から短時間労働者と一般労働者それぞれの薬剤師のデータを取り出し、同じ「1時間あたりいくらか」に揃えて比較しました。

本記事の調査・評価基準

調査対象
薬剤師(職種小分類コード1124)、男女計、企業規模10人以上
数値の確認日
令和5年(2023年)調査
評価項目
1時間当たり所定内給与額、所定内給与額、所定内実労働時間数、年間賞与その他特別給与額
順位の決め方
正社員の時給は「所定内給与額 ÷ 所定内実労働時間数」で換算。どちらも残業代を含まない所定内の数字で揃えています
編集方針
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時給で比べると21%の差がつく

まず所定内の時給だけを比べます。

短時間勤務 短時間勤務:2845円 2845 正社員(換算) 正社員(換算):2356円 2356
薬剤師の1時間あたり所定内給与額。短時間勤務のほうが正社員の時給換算を上回る。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が算出
短時間勤務正社員
1時間あたり所定内給与2,845円2,356円
算出方法統計の実額388,700円 ÷ 165時間
月の労働時間約81時間165時間
平均年齢52.6歳40.3歳

差は489円、率にして21%です。

正社員の時給が低く出るのは、所定内給与38万8,700円を月165時間で割っているからです。加えて正社員には月10.0時間の超過実労働時間があり、この分の残業代は所定内給与に含まれていません。残業代を足せば手取り総額は増えますが、時間あたりの単価としては短時間勤務が上回ります。

賞与を含めても逆転は残る

「正社員には賞与がある」という反論があります。実際、年間賞与は正社員が76万8,700円に対し、短時間勤務は8万100円しかありません。9.6倍の差です。

そこで賞与を年間労働時間で割り、時給に上乗せして計算し直しました。

短時間勤務正社員
年間賞与80,100円768,700円
年間労働時間約972時間1,980時間
賞与を含めた時給2,927円2,744円
+183円

賞与を入れると差は489円から183円に縮まりますが、それでも短時間勤務のほうが高いままです。 率にすると約7%の差です。

賞与という最大の反論材料を計算に入れてもなお逆転が残る、という点がこの比較の要点です。

なぜ逆転が起きるのか

構造的な理由は3つ考えられます。

1. 薬剤師の人員配置が法律で決まっている 調剤薬局は処方箋の取扱枚数に応じて薬剤師を配置する必要があります。誰かが休めばその枠を埋めなければならず、時間単位で確実に来てくれる人の価値が高くなります。

2. 欠員の穴埋めは金額で解決するしかない 正社員の採用には時間がかかります。産休・急な退職で空いた枠を即座に埋めるには、時給を上げて短期の人材を確保するのが現実的な手段になります。

3. 賞与や退職金の分を時給に乗せている 短時間勤務には賞与がほとんど付きません。その分を時給に乗せなければ人が集まらない、という価格形成が働きます。実際、賞与込みで計算すると差が7%まで縮むのは、この構造を裏付けています。

短時間勤務の実態

統計から見える働き方の平均像です。

項目数値
平均年齢52.6歳
月の実労働日数13.5日
1日の所定内労働時間6.0時間
月の労働時間約81時間
月収の目安約23万円

月13.5日、1日6時間です。週3日程度、9時から16時といった働き方が平均像になります。平均年齢52.6歳は正社員の40.3歳より12歳高く、育児や介護と両立している層、あるいは定年前後で勤務時間を落とした層が中心だと考えられます。

なお経験年数別に見ると5〜9年の階級だけ時給4,397円と突出しており、他の階級(2,398〜2,637円)から大きく外れています。特定の高時給層が偏って含まれている可能性があるため、この階級の数字は参考値として扱ってください。

選ぶ前に確認すべきトレードオフ

時給が高いことは事実ですが、金額だけで判断すると後悔します。

  • 賞与がほぼ無い — 年8万円と76万円の差は、生活設計に直結します
  • 社会保険の加入条件 — 週の労働時間によって加入可否が変わります
  • 昇進の機会 — 管理薬剤師などの役職に就く道は実質的に閉じます。年収記事で見たとおり、50代で年収が回復するのは昇進層が牽引しているためで、その経路から外れることになります
  • 契約の更新 — 期間の定めがある場合、次の更新が保証されているわけではありません

逆に言えば、すでに世帯収入が確保されている、勤務日数を自分で決めたい、決まった時間で帰りたいという条件に当てはまるなら、時間あたりの単価では正社員を上回る選択肢になります。

年収の全体像はこちら薬剤師の年収は543万円|40代で下がる理由をデータで検証薬剤師の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から独自に集計しました。年代別に見ると35〜39歳でピークを迎えたあと40代で下がること、企業規模が小さいほど年収が高いことがわかります。

まとめ

  • 薬剤師の短時間勤務の時給は2,845円、正社員の時給換算は2,356円で、489円(21%)の差
  • 賞与を含めて計算し直しても2,927円対2,744円で逆転は残る
  • 短時間勤務の平均は月13.5日・1日6.0時間、月収の目安は約23万円
  • 逆転の背景には、法定の人員配置・欠員補充の緊急性・賞与分の上乗せがある
  • ただし賞与、社会保険、昇進機会でのトレードオフがある

時間あたりの単価で見るか、年間の総額と将来の伸びで見るかによって、答えは変わります。自分がどちらを優先するのかを先に決めてから比較してください。

出典

  1. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 短時間_職種_経験年数別(e-Stat)
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)(e-Stat)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」