管理薬剤師の年収を統計で検証|役職に就くと145万円上がる
薬剤師の年収を「役職者を除く」統計と比較すると、役職に就いている薬剤師の年収は663.9万円、役職なしは518.9万円で145万円の差がありました。役職者は全体の16.8%しかいません。
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この記事でわかること
- 役職に就いている薬剤師の年収は663.9万円、役職なしは518.9万円で145.0万円の差
- 役職者は薬剤師全体の16.8%(10万7,830人中1万8,150人)しかいない
- 統計上の「役職者」は薬機法上の管理薬剤師と同じ概念ではないため、目安として読む必要がある
「管理薬剤師になれば年収が上がる」とはよく言われますが、実際にいくら上がるのかを示した資料は多くありません。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、薬剤師全体の数字と役職者を除いた薬剤師の数字という2つの表があります。この差を取ることで、役職に就いている薬剤師の年収を逆算できます。
本記事の調査・評価基準
- 調査対象
- 薬剤師(職種小分類コード1124)、男女計、企業規模10人以上
- 数値の確認日
- 令和5年(2023年)調査
- 評価項目
- 所定内給与額、年間賞与その他特別給与額、労働者数
- 順位の決め方
- 「薬剤師全体」と「役職者を除く薬剤師」の2表を突き合わせ、労働者数で加重平均を解いて役職者の年収を逆算。年収は所定内給与額×12+年間賞与で算出しています
- 編集方針
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役職に就くと145万円上がる
| 区分 | 推定年収 | 所定内給与(月額) | 年間賞与 | 人数 |
|---|---|---|---|---|
| 役職なし | 518.9万円 | 37.62万円 | 67.47万円 | 89,680人 |
| 薬剤師全体 | 543.3万円 | 38.87万円 | 76.87万円 | 107,830人 |
| 役職者(逆算) | 663.9万円 | — | — | 18,150人 |
役職者と役職なしの差は145.0万円です。
よく引用される「薬剤師の平均年収543.3万円」は、この2つが混ざった数字です。役職に就いていない薬剤師から見れば、平均値は実感より24.4万円高く出ています。
役職者は6人に1人しかいない
差額と同じくらい重要なのが、その席の少なさです。
役職に就いている薬剤師は1万8,150人で、全体10万7,830人の16.8%。 およそ6人に1人です。
年収記事で見たとおり、薬剤師の年収カーブは35〜39歳の604.6万円をピークにいったん下がり、50代で675.3万円まで回復します。この50代の回復を牽引しているのが、この16.8%だと考えられます。
40代で年収が下がる構造はこちら薬剤師の年収は543万円|40代で下がる理由をデータで検証薬剤師の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から独自に集計しました。年代別に見ると35〜39歳でピークを迎えたあと40代で下がること、企業規模が小さいほど年収が高いことがわかります。つまり40代の停滞を抜けられるかどうかは、6人に1人の席に入れるかどうかで分かれます。「経験を積めばいずれ上がる」という話ではありません。
この数字の読み方に注意
3つ補足が必要です。
1. 統計の「役職者」と薬機法の「管理薬剤師」は別の概念です
賃金構造基本統計調査でいう役職者は、部長級・課長級・係長級にあたる人を指します。一方、管理薬剤師は医薬品医療機器等法にもとづき薬局や店舗に置かれる管理者です。
薬局やドラッグストアでは管理薬剤師が役職者として扱われることが多いため目安にはなりますが、両者は完全には一致しません。 管理薬剤師でも統計上は役職者に含まれない場合があります。
2. 逆算値であり、直接調査された数字ではありません
663.9万円は、全体と非役職者の平均を人数で加重平均した式を解いて求めたものです。役職者だけを対象に調査した数字ではないため、実際の分布には幅があります。
3. 残業代を含んでいません
所定内給与額をもとにしているため、時間外手当は含まれていません。役職者は管理監督者として残業代の対象外になる場合があり、逆に非役職者は残業代が加算されます。実際の手取り差は145万円より小さくなる可能性があります。
この3点目は特に重要です。役職に就いて基本給が上がっても、残業代がなくなって手取りがほとんど変わらない、という話は珍しくありません。
席に入るために何が必要か
管理薬剤師になる条件は、薬機法で定められた実務上の要件と、勤務先ごとの人事要件の2つに分かれます。
法令面では、管理薬剤師はその薬局で実務に従事する薬剤師である必要があり、原則として他の薬局や店舗の管理者との兼務ができません。常勤での勤務が前提になります。
この「兼務不可・常勤前提」という縛りが、働き方の選択と直接ぶつかります。 パートや派遣で時間あたりの単価を上げる道と、役職に就いて年収を上げる道は、基本的に両立しません。
時間あたりの単価で考える場合はこちら薬剤師の派遣・パートは時給2,845円|正社員より21%高い理由薬剤師の短時間勤務の時給を厚生労働省の統計から集計すると2,845円で、正社員の時給換算2,356円を21%上回ります。賞与を含めて計算し直しても逆転は残ります。数字とトレードオフを検証しました。どちらが得かは前提で変わる
数字だけを並べると次のようになります。
| 年収 | 働き方の自由度 | |
|---|---|---|
| 役職者 | 663.9万円 | 低い(常勤・兼務不可) |
| 役職なし(常勤) | 518.9万円 | 中 |
| 短時間勤務 | 時給2,845円 | 高い(日数・時間を選べる) |
短時間勤務の時給2,845円をフルタイム(月165時間)に換算すると月46.9万円になり、年収では役職なしの常勤を上回ります。ただし賞与がほとんど付かないため、年間の総額では逆転します。
年収の絶対額を取るなら役職、時間あたりの単価と自由度を取るなら短時間勤務、という整理になります。役職なしの常勤は、この2つの中間で最も条件が中途半端な位置にあります。
まとめ
- 役職に就いている薬剤師の年収は663.9万円、役職なしは518.9万円で145.0万円の差
- ただし役職者は全体の16.8%、6人に1人しかいない
- よく見る「平均543.3万円」は両者が混ざった数字で、役職なしから見れば24.4万円高く出ている
- 統計上の役職者と薬機法上の管理薬剤師は別概念であり、目安として読む必要がある
- 残業代を含まない数字のため、実際の手取り差は145万円より小さくなる可能性がある
40代で年収が停滞するかどうかは、この16.8%に入れるかで分かれます。ただし席の数が限られている以上、全員が選べる道ではありません。役職を狙うのか、働き方を変えて時間あたりの単価を上げるのか、早い段階で方向を決めておくほうが動きやすくなります。