公務員薬剤師の年収615万円の中身|差はボーナス75.8万円
よく見る「公務員薬剤師の年収615万円」は薬剤師単独の数字ではありません。令和6年地方公務員給与実態調査を編集部が団体区分別に組み直し、民間の薬剤師と月額・賞与に分けて比べた結果をまとめます。
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この記事でわかること
- よく引用される「615万円」は給料表区分「薬剤師・医療技術職」の平均で、診療放射線技師や臨床検査技師を含む35,518人の数字
- 民間の薬剤師と比べると、月額の所定内給与は民間が24,102円高い。それでも年収で公務員が上回るのは賞与が約2倍あるため
- 同じ公務員でも団体区分で123万円の幅がある。指定都市668.0万円に対し町村546.9万円
「公務員薬剤師の年収は615万円」という数字は多くのサイトに載っています。出典をたどると、総務省の地方公務員給与実態調査に行き着きます。
ただ、この数字を薬剤師の平均年収として読むと間違えます。調査の中身を確認したうえで、民間の薬剤師と比べられる形に組み直しました。
本記事の調査・評価基準
- 調査対象
- 総務省「令和6年地方公務員給与実態調査」第5表(職種別職員の平均給与額)の給料表区分「薬剤師・医療技術職」、および厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年の薬剤師(職種小分類コード1124)
- 数値の確認日
- 地方公務員給与実態調査は令和6年(2024年)調査・2026年1月20日公表。賃金構造基本統計調査は令和5年(2023年)調査
- 評価項目
- 年収 = 給与月額合計 × 12 + 期末手当・勤勉手当(年額)、団体区分別(都道府県・指定都市・特別区・市・町村・一部事務組合)に分解、残業代の扱いを揃えるため、時間外勤務手当を除いた月額でも算出
- 順位の決め方
- 当サイトは順位付けを行っていない。掲載しているのは公表されている統計表の値と、そこから編集部が算出した数値のみで、広告出稿の有無は集計方法にも記載内容にも影響していない
- 編集方針
- 当サイトは広告収益で運営していますが、報酬額の多寡は順位に影響させていません。 上記の評価項目のみで順位を決定しています。
「615万円」は薬剤師だけの数字ではない
地方公務員の給与は職種ごとではなく給料表の区分ごとに集計されます。薬剤師が属するのは「薬剤師・医療技術職」という区分で、令和6年の対象は35,518人です。
この区分には薬剤師のほか、診療放射線技師・臨床検査技師・理学療法士などの医療技術職が含まれます。薬剤師だけを取り出した平均給与額は、この調査では公表されていません。
数字そのものを確認します。
| 項目 | 薬剤師・医療技術職(全地方公共団体) |
|---|---|
| 職員数 | 35,518人 |
| 給与月額合計 | 385,489円 |
| うち給料月額 | 313,240円 |
| うち時間外勤務手当 | 20,891円 |
| 期末手当・勤勉手当(年額) | 1,526,758円 |
| 年収(月額×12+期末勤勉) | 6,152,626円 |
385,489円×12+1,526,758円=6,152,626円。よく見る「615万2,626円」はこの計算で出てきます。薬剤師の平均ではなく、薬剤師を含む給料表区分の平均である、というのが最初に押さえるべき点です。
参考として、同じ調査の他区分と並べるとこうなります。
| 給料表区分 | 職員数 | 年収 |
|---|---|---|
| 医師・歯科医師職 | 9,269人 | 1,584.1万円 |
| 企業職 | 217,718人 | 709.2万円 |
| 研究職 | 11,766人 | 684.7万円 |
| 消防職 | 164,346人 | 652.0万円 |
| 一般職員計 | 1,635,661人 | 648.5万円 |
| 一般行政職 | 876,953人 | 644.7万円 |
| 薬剤師・医療技術職 | 35,518人 | 615.3万円 |
| 看護・保健職 | 79,453人 | 601.2万円 |
| 福祉職 | 106,502人 | 564.7万円 |
薬剤師・医療技術職は、地方公務員の一般職員全体(648.5万円)より33.2万円低い位置にあります。「公務員の中でも高い区分」ではありません。
団体区分で123万円の幅がある
同じ地方公務員でも、どこに勤めるかで金額は変わります。県庁や道府県の保健所に勤める場合は「都道府県」、市役所なら「市」というように、採用元の団体で区分が決まります。団体区分別に組み直しました。
| 団体区分 | 職員数 | 年収 | 時間外勤務手当を除いた年収 |
|---|---|---|---|
| 特別区 | 588人 | 669.9万円 | 643.5万円 |
| 指定都市 | 4,335人 | 668.0万円 | 633.7万円 |
| 都道府県 | 11,598人 | 646.3万円 | 624.4万円 |
| 市 | 13,266人 | 594.7万円 | 566.7万円 |
| 一部事務組合 | 3,034人 | 561.9万円 | 542.2万円 |
| 町村 | 2,697人 | 546.9万円 | 531.5万円 |
| 全地方公共団体 | 35,518人 | 615.3万円 | 590.2万円 |
最も高い特別区(669.9万円)と最も低い町村(546.9万円)の差は123.0万円です。地域手当の支給率と、時間外勤務手当の水準がこの差を作っています。指定都市の時間外勤務手当は月28,543円、町村は月12,764円で、月あたり1.6万円近く違います。
「公務員だから安定して同じ額」という理解は、団体区分をまたぐと成り立ちません。
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ここが本題です。民間の薬剤師と比べます。比較対象は厚生労働省の賃金構造基本統計調査に載る薬剤師(職種小分類コード1124、企業規模計、10,783人)です。
2つの調査は集計の作り方が違うので、残業代を含まない月額に揃えました。公務員側は給与月額合計から時間外勤務手当を差し引き、民間側は所定内給与額を使っています。
| 項目 | 地方公務員(薬剤師・医療技術職) | 民間の薬剤師 | 差 |
|---|---|---|---|
| 月額(残業代を除く) | 364,598円 | 388,700円 | 民間が +24,102円 |
| 年間賞与 | 1,526,758円 | 768,700円 | 公務員が +758,058円 |
| 年収(残業代を除く) | 590.2万円 | 543.3万円 | 公務員が +46.9万円 |
| 年収(残業代を含む) | 615.3万円 | 577.9万円 | 公務員が +37.4万円 |
読み取れることは1つです。月給では民間のほうが高い。それでも年収で公務員が上回るのは、年間賞与が152.7万円対76.9万円と約2倍あるためです。
差額46.9万円のうち、賞与だけで75.8万円ぶんの差が生まれ、月額のマイナス28.9万円(24,102円×12)がそれを打ち消して46.9万円に落ち着く、という構造になっています。
この構造は、転職を考えるときの見え方を変えます。月々の手取りだけを比べると公務員は見劣りしますが、年単位でならすと逆転します。逆に言えば、公務員から民間へ移る場合、月給が上がっても年収が下がる組み合わせがあり得ます。
比較には注意点が2つあります。1つは、公務員側の数字が薬剤師単独ではないこと。もう1つは、平均年齢が揃っていないことです。民間の薬剤師の平均年齢は40.3歳ですが、地方公務員給与実態調査の給料表区分別には平均年齢が公表されていません。年齢構成の違いによる差は、この比較では取り除けていません。
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数字以外に、制度上はっきりしている条件があります。地方公務員は地方公務員法により、営利企業への従事等が制限されます。副業を収入設計に組み込むことは前提にできません。
民間の薬剤師であれば、短時間勤務の時給は全国平均で2,845円です。休日を月1〜2日使えば年40万円台の副収入が視野に入りますが、公務員ではこの選択肢が閉じます。年収の差46.9万円は、この制約と合わせて見る必要があります。
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- 月々の額よりも年単位の総額と、支給の安定を重く見る人
- 指定都市・特別区・都道府県のいずれかで勤務先を探せる人(市町村とは年収で100万円前後の差がある)
- 薬事監視・保健所業務など、調剤以外の職務内容に関心がある人
向いていない人
- 副業・単発勤務を収入の一部として計画に入れたい人(地方公務員法により従事が制限される)
- 月々の手取りを最優先で上げたい人(残業代を除く月額は民間のほうが24,102円高い)
- 町村部で勤務先を探している人(同じ区分でも年収は546.9万円で、指定都市と121万円の差がある)
まとめ
- 「公務員薬剤師の年収615万円」は、給料表区分「薬剤師・医療技術職」35,518人の平均。診療放射線技師や臨床検査技師を含み、薬剤師単独の数字ではない
- 地方公務員の一般職員全体(648.5万円)より33.2万円低い区分にあたる
- 団体区分で幅があり、特別区669.9万円・指定都市668.0万円に対し町村546.9万円。差は123.0万円
- 民間の薬剤師と残業代を除いて比べると、月額は民間が24,102円高く、年間賞与は公務員が75.8万円高い。年収では公務員が46.9万円上回る
- 地方公務員法により営利企業への従事が制限されるため、副業を収入設計に含められない
年収の数字だけを見て判断せず、月額と賞与のどちらで受け取りたいか、副業の選択肢を残したいかで考えると、比較の軸がはっきりします。