薬剤師が正社員で得をし始めるのは経験10年目から
薬剤師の正社員とパート・派遣を、賞与まで含めた時間単価に揃えて経験年数別に比べました。正社員が追い越すのは経験10〜14年から。それまでの約10年間は、時間あたりの取り分では短時間勤務のほうが上回っています。
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この記事でわかること
- 賞与込みの時間単価で比べると、正社員が短時間勤務を追い越すのは経験10〜14年から
- 経験0年時点では短時間勤務のほうが709円高い。正社員1,887円に対して短時間2,596円
- 正社員の時間単価は経験0年から15年以上で66.2%伸びる一方、短時間勤務は5.0%しか伸びない
薬剤師の求人を見ると、パート・派遣の時給が正社員の時給換算を上回っていることがあります。ではなぜ正社員という選択肢が残るのか。その答えは、いまの単価ではなく単価の伸び方にあります。
この記事では、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、正社員(一般労働者)と短時間労働者を賞与まで含めた時間単価に揃え、経験年数別に並べ直しました。どちらが得かではなく、どの時点で入れ替わるかを出しています。
本記事の調査・評価基準
- 調査対象
- 薬剤師(職種小分類コード1124)の一般労働者および短時間労働者、企業規模10人以上、男女計
- 数値の確認日
- 令和5年(2023年)調査
- 評価項目
- 所定内給与額、年間賞与その他特別給与額、所定内実労働時間数、1時間当たり所定内給与額、実労働日数、経験年数階級
- 順位の決め方
- 正社員の時間単価は「(所定内給与額×12+年間賞与)÷(所定内実労働時間数165時間×12)」、短時間勤務は「1時間当たり所定内給与額+年間賞与÷(実労働日数×1日あたり所定内時間×12)」で編集部が算出。いずれも所定内のため残業代・通勤手当・退職金・社会保険の事業主負担は含まない
- 編集方針
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単価で比べると、正社員は最初10年間負けている
年収の平均は正社員543.3万円ですが、これは働く時間が違うので単体では比べられません。年間の所定内労働時間は、正社員が1,980時間、短時間勤務が972時間と2倍以上の開きがあります。
そこで、賞与を含めた1時間あたりの取り分に揃えました。
| 経験年数 | 正社員の時間単価 | 短時間勤務の時間単価 | 差 |
|---|---|---|---|
| 0年 | 1,887円 | 2,596円 | 短時間が**+709円** |
| 1〜4年 | 2,477円 | 2,554円 | 短時間が+77円 |
| 5〜9年 | 2,589円 | (4,510円・下記参照) | — |
| 10〜14年 | 2,971円 | 2,487円 | 正社員が+484円 |
| 15年以上 | 3,136円 | 2,727円 | 正社員が+409円 |
| 全体平均 | 2,744円 | 2,927円 | 短時間が+183円 |
入れ替わりが起きるのは経験10〜14年の階級です。 それより手前、およそ10年間は、時間あたりの取り分では短時間勤務のほうが上回っています。
なお5〜9年の短時間勤務は4,510円と、前後の階級(2,554円・2,487円)から大きく外れています。この階級の対象者は6,230人と短時間勤務全体44,540人の14.0%にとどまり、標本の偏りとみられるため、傾向線としては扱いません。実数は隠さず載せますが、判断材料にはしないでください。
上の折れ線は正社員だけを示したものです。0年の1,887円から15年以上の3,136円まで、1,249円(66.2%)上がっています。
同じ期間に、短時間勤務は2,596円から2,727円へ131円(5.0%)しか動きません。正社員という契約で買っているのは、いまの単価ではなく、この傾きです。
差の正体は賞与にある
なぜ正社員だけが上がるのか。内訳を見ると、賞与の扱いが違います。
| 項目 | 正社員 | 短時間勤務 |
|---|---|---|
| 年間の所定内労働時間 | 1,980時間 | 972時間 |
| 年間賞与 | 76.9万円 | 8.0万円 |
| 年収に占める賞与の割合 | 14.2% | 2.8% |
| 年収 | 543.3万円 | 284.5万円 |
正社員の年収のうち 14.2%が賞与 です。賞与は勤続年数や評価に連動して増える設計になっていることが多く、ここが経験年数とともに単価を押し上げます。
短時間勤務の賞与は年8.0万円で、年収に占める割合は2.8%です。時給は最初から高い水準に置かれていますが、増える部分がほとんどありません。
時給そのものの水準はこちら薬剤師の時給は2,845円|145職種中14位、経験では上がらない薬剤師の時給を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から145職種すべて並べ直して確認すると2,845円で14位でした。短時間労働者全体の2.01倍ですが、経験0年と15年以上の差は41円しかありません。年収で見ると、伸び幅は247.3万円
時間単価ではなく年収で見ても、同じ形になります。
| 経験年数 | 正社員の年収 | 0年からの差 |
|---|---|---|
| 0年 | 373.7万円 | — |
| 1〜4年 | 490.5万円 | +116.8万円 |
| 5〜9年 | 512.5万円 | +138.8万円 |
| 10〜14年 | 588.3万円 | +214.6万円 |
| 15年以上 | 621.0万円 | +247.3万円 |
新卒に近い0年時点の373.7万円は、薬剤師の平均543.3万円をかなり下回ります。「薬剤師なのに給料が低い」と感じる時期が最初の数年に集中するのは、この形が理由です。 1〜4年で490.5万円まで上がり、平均を超えるのは10年前後になります。
あわせて読みたい薬剤師の年収は543万円|40代で下がる理由をデータで検証薬剤師の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から独自に集計しました。年代別に見ると35〜39歳でピークを迎えたあと40代で下がること、企業規模が小さいほど年収が高いことがわかります。正社員を選ぶかどうかの判断材料
正社員が向いている人
- 働ける期間が今後10年以上あり、同じ勤務先または同業種で経験年数を積み上げられる
- 管理薬剤師など役職に就く見込みがある(役職者と役職なしでは145万円の差がある)
- 賞与・退職金・社会保険の事業主負担まで含めた総額で条件を比べたい
- 住宅ローンなど、雇用形態が審査に影響する予定がある
向いていない人
- 働ける時間が週30時間を下回る。時間単価では短時間勤務のほうが有利な水準にある
- 数年以内に離職・休職の予定がある。経験年数の伸びを受け取る前に契約が切れる
- 勤務地や時間帯を自分で決めたい。正社員は勤務条件の裁量が小さい
- 扶養の範囲内で働きたい
判断で見落としやすいのは、同じ勤務先に居続けなくても経験年数は積み上がるという点です。統計上の「経験年数」は職種としての経験であり、勤続年数とは別のものです。薬剤師の平均勤続年数は7.9年と短い一方で、経験年数に応じた単価の伸びは残ります。
つまり正社員という選択は「1社に定年まで勤める」ことと同義ではありません。正社員のまま職場を移るという選び方でも、この傾きは受け取れます。
勤続年数の実態はこちら薬剤師の勤続年数は7.9年|144職種中133位という前提「薬剤師を辞めたい」と感じたときに知っておきたい前提を統計で確認しました。薬剤師の平均勤続年数は7.9年で、比較できる144職種のうち133位。全職種平均より3.9年短く、同じ医療系の他職種よりも短い水準です。まとめ
- 賞与込みの時間単価では、正社員が短時間勤務を追い越すのは経験10〜14年から
- 経験0年時点では正社員1,887円・短時間2,596円で、短時間のほうが709円高い
- 正社員の時間単価は0年から15年以上で66.2%(+1,249円)伸びる。短時間は5.0%(+131円)
- 差の背景は賞与。年収に占める割合は正社員14.2%、短時間2.8%
- 年収では0年373.7万円から15年以上621.0万円へ、247.3万円の伸び
正社員を選ぶかどうかは、今後10年以上この職種で経験年数を積む予定があるかどうかでおおむね分かれます。積む予定がないなら、時間単価では短時間勤務のほうが上回る期間が続きます。