薬剤師の6割は薬局勤務|向き不向きを4つの数字で見る

薬剤師に向いている人を性格ではなく統計から確認しました。届出薬剤師の60.0%は薬局勤務、研究・開発を含む企業は10.4%です。短時間勤務の比率は全職種中央値の2.5倍、残業は月10.0時間という実像をまとめます。

最終更新 2026年8月17日 公開 2026年8月17日 執筆 編集部

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この記事でわかること

  • 届出薬剤師329,045人のうち60.0%が薬局勤務。病院は17.5%、研究・開発を含む医薬品関係企業は10.4%
  • 短時間勤務の比率は29.2%で、144職種の中央値11.8%の2.5倍。働く時間を落としやすい職種にあたる
  • 残業は月10.0時間で144職種中56番目に少ない。ただし経験年数で年収は66.2%伸びる一方、時給はほぼ動かない

「薬剤師に向いている人」を扱う記事は、たいてい性格の話になります。几帳面、コミュニケーション能力、責任感。ただ、これらは薬剤師に限らず多くの職種に当てはまります。

この記事では、性格ではなく仕事の条件のほうを数字にしました。厚生労働省の統計から、実際にどこで働いていて、どれだけ働いて、何で給料が決まるのかを4つの数字にまとめています。合うかどうかは、この4つと自分の希望を突き合わせて判断できます。

本記事の調査・評価基準

調査対象
届出薬剤師329,045人(薬剤師法第9条の届出)、および賃金構造基本統計調査の職種小分類145区分のうち「不詳」を除く144職種
数値の確認日
医師・歯科医師・薬剤師統計は令和6年(2024年)、賃金構造基本統計調査は令和5年(2023年)
評価項目
施設・業務の種別、短時間労働者比率、超過実労働時間数、経験年数別の賃金、性別構成
順位の決め方
短時間労働者比率は「短時間労働者数÷(一般労働者数+短時間労働者数)」として144職種すべてを編集部が算出し、順位を求めた。厚生労働省が公表している順位ではない
編集方針
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1. 6割は薬局にいる

まず、実際にどこで働いているか。イメージと最も食い違いやすいのがここです。

薬局 薬局:60% 60 % 病院 病院:17.5% 17.5 % 医薬品関係企業 医薬品関係企業:10.4% 10.4 % その他・無職 その他・無職:6.4% 6.4 % 衛生行政機関 衛生行政機関:2.1% 2.1 % 診療所 診療所:1.7% 1.7 % 大学 大学:1.5% 1.5 % 介護保険施設 介護保険施設:0.4% 0.4 %
届出薬剤師の施設・業務の種別ごとの構成割合。薬局が6割を占める。 出典:厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」より編集部が作成
施設・業務の種別人数構成割合
薬局の従事者197,437人60.0%
 うち勤務者(管理者以外)132,085人40.1%
 うち勤務者(管理者)49,537人15.1%
 うち開設者・法人代表者15,815人4.8%
病院の従事者57,595人17.5%
医薬品関係企業の従事者34,184人10.4%
その他の者(無職を含む)20,976人6.4%
衛生行政機関・保健衛生施設6,906人2.1%
診療所の従事者5,695人1.7%
大学の従事者5,011人1.5%
介護保険施設の従事者1,217人0.4%

薬学部で学ぶ内容は創薬や薬理を含みますが、研究・教育に携わる大学勤務は1.5%、医薬品関係企業を合わせても11.9% です。10人に9人は、調剤と服薬指導を中心とする現場にいます。

さらに薬局の中を見ると、管理者以外の勤務者が40.1%で最も多い区分です。薬剤師全体の4割は「薬局の一般勤務者」というひとつの働き方に集中していることになります。

向き不向きを考えるとき、最初に確認すべきはここです。研究や開発をしたくて資格を取る場合、統計上その席は10人に1人強しかありません。

職域ごとの増減はこちら薬剤師は人口10万対265.8人|42年で2.54倍になった薬剤師の将来性を、届出薬剤師数の42年間の推移と厚生労働省の需給推計から確認しました。人口10万対の薬剤師数は1982年の104.8人から2024年の265.8人へ2.54倍。2045年は需要を最大12.6万人上回る推計です。

2. 時間を落としやすい

2つめは働き方の可変性です。薬剤師は、常勤を離れても仕事が成立しやすい職種にあたります。

区分人数
一般労働者(常勤)107,830人
短時間労働者(パート・アルバイト・派遣等)44,540人
短時間勤務の比率29.2%
144職種の中央値11.8%

短時間勤務の比率29.2%は、144職種の中央値11.8%の2.5倍 です。順位では高いほうから33番目にあたります。上位は飲食物給仕従事者87.8%、販売店員67.9%といった職種が並びますが、それらは短時間の時給が低い職種です。

薬剤師が違うのは、時間を落としても単価が下がらない点です。短時間勤務の時給は2,845円で、短時間労働者全体の平均1,412円の2.01倍にあたります。

時給の水準を職種横断で確認する薬剤師の時給は2,845円|145職種中14位、経験では上がらない薬剤師の時給を厚生労働省の賃金構造基本統計調査から145職種すべて並べ直して確認すると2,845円で14位でした。短時間労働者全体の2.01倍ですが、経験0年と15年以上の差は41円しかありません。

3. 残業は月10.0時間

3つめは労働時間です。

項目薬剤師144職種の中央値
超過実労働時間数(残業)月10.0時間月12時間
所定内実労働時間数月165時間
平均年齢40.3歳
平均勤続年数7.9年12.0年

残業は月10.0時間で、少ないほうから 144職種中56番目 です。中央値の12時間を2時間下回りますが、極端に少ないわけではありません。医師の月20時間、臨床検査技師の月12時間と比べると少なく、看護師の月6時間、歯科医師の月3時間と比べると多い位置です。

一方で、平均勤続年数7.9年は144職種中133位と短い水準です。時間の負荷は平均並みだが、同じ職場に留まる期間は短いというのが、この職種の労働時間まわりの姿になります。

4. 給料は「経験年数」でしか動かない

4つめが、向き不向きに最も効く数字です。薬剤師の年収は経験年数に強く連動し、それ以外の要素では動きにくい構造になっています。

経験年数正社員の年収短時間勤務の時給
0年373.7万円2,596円
1〜4年490.5万円2,527円
5〜9年512.5万円(4,397円・標本の偏りとみられる)
10〜14年588.3万円2,398円
15年以上621.0万円2,637円
0年からの伸び+66.2%+1.6%

正社員の年収は経験0年から15年以上で 66.2% 伸びます。一方、短時間勤務の時給は0年2,596円から15年以上2,637円へ 41円(1.6%) しか動きません。

ここから読めることが2つあります。

1つめは、常勤で長く続けるほど有利な設計だということ。 資格を取った時点の年収373.7万円は薬剤師の平均543.3万円を大きく下回り、平均に届くのは10年前後です。

2つめは、時間単位で働く場合はいつ始めても条件がほぼ同じだということ。 経験を積んでから時給が上がるわけではないので、ブランクがあっても不利になりにくいとも言えます。復職を前提にする人にとっては、これは有利に働く条件です。

なお男女比は女性62.0%・男性38.0%で、女性のほうが多い職種です。年収は女性512.4万円、男性582.6万円で70.2万円の差がありますが、これは所定内実労働時間(女性164時間・男性167時間)と残業時間(女性9時間・男性11時間)の差を含んだ数字です。

常勤と短時間の分岐点はこちら薬剤師が正社員で得をし始めるのは経験10年目から薬剤師の正社員とパート・派遣を、賞与まで含めた時間単価に揃えて経験年数別に比べました。正社員が追い越すのは経験10〜14年から。それまでの約10年間は、時間あたりの取り分では短時間勤務のほうが上回っています。

4つの数字から見た向き不向き

薬剤師が向いている人

  • 調剤と服薬指導が仕事の中心になることを受け入れられる(6割が薬局勤務、4割は薬局の一般勤務者)
  • ライフステージに応じて働く時間を変えたい。短時間勤務の比率は全職種中央値の2.5倍で、時給も2,845円と下がりにくい
  • 一度離れても戻る可能性がある。時給が経験年数でほぼ動かないため、ブランクの不利が小さい
  • 10年以上続ける前提がある。年収は経験0年から15年以上で66.2%伸びる
  • 残業が月10時間前後の働き方が合う

向いていない人

  • 創薬・研究・開発に携わりたい。大学1.5%、医薬品関係企業10.4%で、合わせても11.9%の席しかない
  • 成果や実績で短期間に年収を上げたい。年収を動かすのはほぼ経験年数で、しかも最初の数年は平均を大きく下回る
  • 同じ職場に長く定着したい。平均勤続年数7.9年は144職種中133位で、転職が前提になりやすい
  • 仕事の裁量や進め方を自分で設計したい。業務範囲は法令で定められている

この4つのうち最も見落とされやすいのは1つめです。薬学部で学ぶ内容と、実際に配属される場所の分布が一致していません。 向いていないと感じる原因が、職種そのものではなく職域の偏りにあることは珍しくありません。

その場合、辞めるかどうかの前に、まだ入っていない業態を検討する余地があります。病院17.5%、衛生行政機関2.1%、介護保険施設0.4%はいずれも少数派ですが、席が無いわけではありません。

辞めたいと感じたときの前提はこちら薬剤師の勤続年数は7.9年|144職種中133位という前提「薬剤師を辞めたい」と感じたときに知っておきたい前提を統計で確認しました。薬剤師の平均勤続年数は7.9年で、比較できる144職種のうち133位。全職種平均より3.9年短く、同じ医療系の他職種よりも短い水準です。

まとめ

  • 届出薬剤師329,045人のうち60.0%が薬局勤務。病院17.5%、医薬品関係企業10.4%、大学1.5%
  • 薬剤師全体の**40.1%**が「薬局の管理者以外の勤務者」というひとつの区分に集中している
  • 短時間勤務の比率は**29.2%**で144職種の中央値11.8%の2.5倍。時給2,845円と下がりにくい
  • 残業は月10.0時間で少ないほうから56番目。勤続年数7.9年は133位と短い
  • 年収は経験0年から15年以上で**66.2%伸びる一方、短時間の時給は1.6%**しか動かない

向いているかどうかは性格ではなく、この4つと自分の希望が噛み合うかで判断できます。とくに研究・開発を想定している場合は、席が11.9%しかない点を先に確認してください。

出典

  1. 厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)DB(e-Stat statsDataId 0003426315)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 短時間労働者_職種_DB1(e-Stat statsDataId 0004008680)