薬剤師の管理者ポストは2年で0.26pt縮んだ|やりがいの前提

薬剤師のやりがいを主観ではなく構造で確認しました。薬局の一般勤務者が5.1%増える一方で管理者は2.5%増にとどまり、ポストの比率は縮んでいます。役職に就くと年収は145万円上がりますが、就ける割合は16.8%です。

最終更新 2026年8月17日 公開 2026年8月17日 執筆 編集部

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この記事でわかること

  • 薬局の一般勤務者は2年で5.1%増えたが、管理者は2.5%増にとどまる。ポストの比率は25.35%から25.09%へ縮んだ
  • 役職に就いている薬剤師は16.8%。就くと年収は518.9万円から663.9万円へ145万円上がる
  • 薬局の開設者・法人代表者は2年で908人(5.4%)減っている。独立という出口も細っている

「やりがい」は主観なので、統計では測れません。この記事でもそれを測ろうとはしません。

代わりに確認するのは、やりがいの話をするときに前提になっている構造のほうです。任される範囲が広がるか、立場が変わるか、それが報酬に反映されるか。ここは公的統計で数字にできます。

本記事の調査・評価基準

調査対象
届出薬剤師329,045人(令和6年)および323,690人(令和4年)の施設・業務の種別、ならびに賃金構造基本統計調査の薬剤師(職種小分類1124)
数値の確認日
医師・歯科医師・薬剤師統計は令和6年(2024年)、賃金構造基本統計調査は令和5年(2023年)
評価項目
薬局の管理者数と一般勤務者数、その2年間の増減、役職者を除く統計との差、開設者・法人代表者数
順位の決め方
管理者比率は厚生労働省の公表値をもとに編集部が算出した。役職者の年収は、全体の統計と「役職者を除く」統計の差から編集部が逆算したもので、厚生労働省が役職者の賃金として公表している数字ではない
編集方針
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増えているのは、ポストのない側

薬局に勤める薬剤師は2年間で6,702人増えました。ただし、その内訳は均等ではありません。

区分令和4年令和6年増減伸び率
薬局の勤務者(管理者以外)125,665人132,085人+6,420人+5.1%
薬局の勤務者(管理者)48,347人49,537人+1,190人+2.5%
薬局の開設者・法人代表者16,723人15,815人−908人−5.4%
薬局の従事者 計190,735人197,437人+6,702人+3.5%

一般勤務者が5.1%増えているのに対し、管理者の増加は2.5%です。 伸び率が半分以下にとどまっています。

これを比率にすると、次のようになります。

指標令和4年令和6年
薬局従事者に占める管理者の割合25.35%25.09%−0.26pt
一般勤務者100人あたりの管理者38.5人37.5人−1.0人

わずかな差に見えますが、方向は明確です。薬局で働く薬剤師は増えているのに、管理者のポストはそれに追いついていません。 一般勤務者100人あたりの管理者は2年で1.0人減りました。

さらに、開設者・法人代表者は 908人(5.4%)減っています。 薬局のチェーン化が進むと個人開設の店舗が減るため、「自分の店を持つ」という出口も細ります。

上がる先も、外に出る先も、同時に狭くなっているというのが、この2年で起きていることです。

立場が変わると、報酬は145万円変わる

では、ポストに就けた場合はどうなるか。賃金構造基本統計調査には「役職者を除く」集計があり、全体との差から役職の効果を出せます。

区分年収
役職に就いている薬剤師663.9万円
役職なしの薬剤師518.9万円
+145.0万円
役職者の割合16.8%

役職に就くと145万円上がりますが、就いているのは6人に1人です。 そして前節のとおり、この6人に1人という比率は広がる方向にはありません。

役職者 役職者:663.9万円 663.9 万円 全体平均 全体平均:543.3万円 543.3 万円 役職なし 役職なし:518.9万円 518.9 万円
薬剤師の年収を立場別に見たもの。役職の有無で145万円の差がある。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年より編集部が算出
役職の差の算出根拠はこちら管理薬剤師の年収を統計で検証|役職に就くと145万円上がる薬剤師の年収を「役職者を除く」統計と比較すると、役職に就いている薬剤師の年収は663.9万円、役職なしは518.9万円で145万円の差がありました。役職者は全体の16.8%しかいません。

伸びているのは、薬局の外にある

一方で、増えている職域もあります。2年間の増減率です。

施設・業務の種別令和6年2年間の増減率
介護保険施設の従事者1,217人+11.5%
 うち介護医療院の勤務者168人+27.3%
薬局の従事者197,437人+3.5%
大学の従事者5,011人+2.2%
病院の従事者57,595人+1.8%
診療所の従事者5,695人−3.1%
医薬品関係企業の従事者34,184人−7.8%
 うち店舗販売業5,090人−17.2%

二桁で伸びているのは介護保険施設だけです。実数は1,217人と小さく、全体の0.4%にすぎません。 ただし伸び率では他のどの区分よりも大きく、介護医療院に限れば27.3%増です。

逆に、医薬品関係企業は7.8%減、店舗販売業は17.2%減と縮んでいます。「調剤以外の仕事」を求めて企業に移るという経路は、統計上は狭くなっています。

職域ごとの需給はこちら薬剤師は人口10万対265.8人|42年で2.54倍になった薬剤師の将来性を、届出薬剤師数の42年間の推移と厚生労働省の需給推計から確認しました。人口10万対の薬剤師数は1982年の104.8人から2024年の265.8人へ2.54倍。2045年は需要を最大12.6万人上回る推計です。

やりがいが職種の問題か、職場の問題か

ここまでの数字が示すのは、役割の広がりを勤務先の中だけで待つと、確率が下がり続けるということです。そのうえで、切り分けの材料になるものを挙げます。

いまの職場で待つ選択が向いている人

  • 管理者が退職・異動する予定があり、後任の見込みが具体的にある
  • 在宅対応や施設との連携など、店舗として新しい業務を始める動きがある
  • 勤務先が出店を続けている。店舗が増えれば管理者のポストも増える
  • 役職以外の評価軸(認定薬剤師の取得支援、専門領域の担当)が制度として存在する

向いていない人

  • 同じ店舗に管理者が長く在籍していて、動く予定がない
  • 勤務先の店舗数が減っている、または出店が止まっている
  • 任される範囲が3年以上変わっていない。統計上、待っているだけで比率は改善しない
  • 不満の中身が「調剤業務そのもの」にある。この場合は勤務先ではなく職域を変える話になる

判断のうえで押さえておきたいのは、役職に就く確率は勤務先によって大きく違うという点です。全国平均の16.8%は、店舗数を増やしている事業者と、そうでない事業者を混ぜた数字です。

年収の面でも、勤務先による差は役職の差と同じ規模あります。一般病院の薬剤師581.1万円に対し保険薬局は479.5万円で、その差は101.7万円です。役職の効果145万円と、業態の効果101.7万円は、同じ桁で効いています。

業態による差はこちら病院薬剤師の年収は581.1万円|薬局より101.7万円高い病院薬剤師の年収を最新の第25回医療経済実態調査で確認しました。一般病院の薬剤師は給料+賞与で581.1万円、保険薬局は479.5万円。「病院は薬局より安い」という通説とは逆で、差の約6割は賞与から生まれています。

まとめ

  • 薬局の一般勤務者は2年で5.1%増、管理者は2.5%増。管理者比率は25.35%から**25.09%**へ縮んだ
  • 一般勤務者100人あたりの管理者は38.5人から37.5人へ1.0人減った
  • 薬局の開設者・法人代表者は908人(5.4%)減。独立という出口も細っている
  • 役職に就くと年収は518.9万円から663.9万円145万円上がるが、就いているのは16.8%
  • 二桁で伸びている職域は介護保険施設(+11.5%)のみ。企業は7.8%減、店舗販売業は17.2%減

やりがいそのものは統計で測れませんが、役割が広がる確率が下がっていることは数字に出ています。待つか動くかを決める材料として使ってください。

出典

  1. 厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  2. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)(役職者を除く)DB(e-Stat statsDataId 0003426335)
  3. 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和5年 一般_職種(小分類)DB(e-Stat statsDataId 0003426315)