薬剤師の管理者ポストは2年で0.26pt縮んだ|やりがいの前提
薬剤師のやりがいを主観ではなく構造で確認しました。薬局の一般勤務者が5.1%増える一方で管理者は2.5%増にとどまり、ポストの比率は縮んでいます。役職に就くと年収は145万円上がりますが、就ける割合は16.8%です。
PR 本記事には広告が含まれます。当サイトは掲載サービスから紹介料を受け取りますが、報酬額は評価順に影響しません。
この記事でわかること
- 薬局の一般勤務者は2年で5.1%増えたが、管理者は2.5%増にとどまる。ポストの比率は25.35%から25.09%へ縮んだ
- 役職に就いている薬剤師は16.8%。就くと年収は518.9万円から663.9万円へ145万円上がる
- 薬局の開設者・法人代表者は2年で908人(5.4%)減っている。独立という出口も細っている
「やりがい」は主観なので、統計では測れません。この記事でもそれを測ろうとはしません。
代わりに確認するのは、やりがいの話をするときに前提になっている構造のほうです。任される範囲が広がるか、立場が変わるか、それが報酬に反映されるか。ここは公的統計で数字にできます。
本記事の調査・評価基準
- 調査対象
- 届出薬剤師329,045人(令和6年)および323,690人(令和4年)の施設・業務の種別、ならびに賃金構造基本統計調査の薬剤師(職種小分類1124)
- 数値の確認日
- 医師・歯科医師・薬剤師統計は令和6年(2024年)、賃金構造基本統計調査は令和5年(2023年)
- 評価項目
- 薬局の管理者数と一般勤務者数、その2年間の増減、役職者を除く統計との差、開設者・法人代表者数
- 順位の決め方
- 管理者比率は厚生労働省の公表値をもとに編集部が算出した。役職者の年収は、全体の統計と「役職者を除く」統計の差から編集部が逆算したもので、厚生労働省が役職者の賃金として公表している数字ではない
- 編集方針
- 当サイトは広告収益で運営していますが、報酬額の多寡は順位に影響させていません。 上記の評価項目のみで順位を決定しています。
増えているのは、ポストのない側
薬局に勤める薬剤師は2年間で6,702人増えました。ただし、その内訳は均等ではありません。
| 区分 | 令和4年 | 令和6年 | 増減 | 伸び率 |
|---|---|---|---|---|
| 薬局の勤務者(管理者以外) | 125,665人 | 132,085人 | +6,420人 | +5.1% |
| 薬局の勤務者(管理者) | 48,347人 | 49,537人 | +1,190人 | +2.5% |
| 薬局の開設者・法人代表者 | 16,723人 | 15,815人 | −908人 | −5.4% |
| 薬局の従事者 計 | 190,735人 | 197,437人 | +6,702人 | +3.5% |
一般勤務者が5.1%増えているのに対し、管理者の増加は2.5%です。 伸び率が半分以下にとどまっています。
これを比率にすると、次のようになります。
| 指標 | 令和4年 | 令和6年 | 差 |
|---|---|---|---|
| 薬局従事者に占める管理者の割合 | 25.35% | 25.09% | −0.26pt |
| 一般勤務者100人あたりの管理者 | 38.5人 | 37.5人 | −1.0人 |
わずかな差に見えますが、方向は明確です。薬局で働く薬剤師は増えているのに、管理者のポストはそれに追いついていません。 一般勤務者100人あたりの管理者は2年で1.0人減りました。
さらに、開設者・法人代表者は 908人(5.4%)減っています。 薬局のチェーン化が進むと個人開設の店舗が減るため、「自分の店を持つ」という出口も細ります。
上がる先も、外に出る先も、同時に狭くなっているというのが、この2年で起きていることです。
立場が変わると、報酬は145万円変わる
では、ポストに就けた場合はどうなるか。賃金構造基本統計調査には「役職者を除く」集計があり、全体との差から役職の効果を出せます。
| 区分 | 年収 |
|---|---|
| 役職に就いている薬剤師 | 663.9万円 |
| 役職なしの薬剤師 | 518.9万円 |
| 差 | +145.0万円 |
| 役職者の割合 | 16.8% |
役職に就くと145万円上がりますが、就いているのは6人に1人です。 そして前節のとおり、この6人に1人という比率は広がる方向にはありません。
伸びているのは、薬局の外にある
一方で、増えている職域もあります。2年間の増減率です。
| 施設・業務の種別 | 令和6年 | 2年間の増減率 |
|---|---|---|
| 介護保険施設の従事者 | 1,217人 | +11.5% |
| うち介護医療院の勤務者 | 168人 | +27.3% |
| 薬局の従事者 | 197,437人 | +3.5% |
| 大学の従事者 | 5,011人 | +2.2% |
| 病院の従事者 | 57,595人 | +1.8% |
| 診療所の従事者 | 5,695人 | −3.1% |
| 医薬品関係企業の従事者 | 34,184人 | −7.8% |
| うち店舗販売業 | 5,090人 | −17.2% |
二桁で伸びているのは介護保険施設だけです。実数は1,217人と小さく、全体の0.4%にすぎません。 ただし伸び率では他のどの区分よりも大きく、介護医療院に限れば27.3%増です。
逆に、医薬品関係企業は7.8%減、店舗販売業は17.2%減と縮んでいます。「調剤以外の仕事」を求めて企業に移るという経路は、統計上は狭くなっています。
職域ごとの需給はこちら薬剤師は人口10万対265.8人|42年で2.54倍になった薬剤師の将来性を、届出薬剤師数の42年間の推移と厚生労働省の需給推計から確認しました。人口10万対の薬剤師数は1982年の104.8人から2024年の265.8人へ2.54倍。2045年は需要を最大12.6万人上回る推計です。やりがいが職種の問題か、職場の問題か
ここまでの数字が示すのは、役割の広がりを勤務先の中だけで待つと、確率が下がり続けるということです。そのうえで、切り分けの材料になるものを挙げます。
いまの職場で待つ選択が向いている人
- 管理者が退職・異動する予定があり、後任の見込みが具体的にある
- 在宅対応や施設との連携など、店舗として新しい業務を始める動きがある
- 勤務先が出店を続けている。店舗が増えれば管理者のポストも増える
- 役職以外の評価軸(認定薬剤師の取得支援、専門領域の担当)が制度として存在する
向いていない人
- 同じ店舗に管理者が長く在籍していて、動く予定がない
- 勤務先の店舗数が減っている、または出店が止まっている
- 任される範囲が3年以上変わっていない。統計上、待っているだけで比率は改善しない
- 不満の中身が「調剤業務そのもの」にある。この場合は勤務先ではなく職域を変える話になる
判断のうえで押さえておきたいのは、役職に就く確率は勤務先によって大きく違うという点です。全国平均の16.8%は、店舗数を増やしている事業者と、そうでない事業者を混ぜた数字です。
年収の面でも、勤務先による差は役職の差と同じ規模あります。一般病院の薬剤師581.1万円に対し保険薬局は479.5万円で、その差は101.7万円です。役職の効果145万円と、業態の効果101.7万円は、同じ桁で効いています。
業態による差はこちら病院薬剤師の年収は581.1万円|薬局より101.7万円高い病院薬剤師の年収を最新の第25回医療経済実態調査で確認しました。一般病院の薬剤師は給料+賞与で581.1万円、保険薬局は479.5万円。「病院は薬局より安い」という通説とは逆で、差の約6割は賞与から生まれています。まとめ
- 薬局の一般勤務者は2年で5.1%増、管理者は2.5%増。管理者比率は25.35%から**25.09%**へ縮んだ
- 一般勤務者100人あたりの管理者は38.5人から37.5人へ1.0人減った
- 薬局の開設者・法人代表者は908人(5.4%)減。独立という出口も細っている
- 役職に就くと年収は518.9万円から663.9万円へ145万円上がるが、就いているのは16.8%
- 二桁で伸びている職域は介護保険施設(+11.5%)のみ。企業は7.8%減、店舗販売業は17.2%減
やりがいそのものは統計で測れませんが、役割が広がる確率が下がっていることは数字に出ています。待つか動くかを決める材料として使ってください。